コラム
Column
2026/03/21
「鏡を見るたびに、目の下の膨らみが気になる」「疲れていないのに『疲れてる?』と聞かれる」
こうした悩みを抱える方の多くが検討するのがクマ取りです。
しかし、クマ取りにも様々な種類があるため「私にはどの施術が合っているの?」と迷ってしまう方も少なくありません。この選択を誤ると、数年後に「目がくぼんで老けて見えてしまった」と後悔するリスクもあります。
本記事では、クマ取りの主要な施術である脱脂と裏ハムラの根本的な違いから、後悔しないための選び方までを詳しく解説します。

裏ハムラ法(経結膜的眼窩脂肪移動術)は、一言で言えば「脂肪を捨てずに活かす」高度な術式です。
私たちの目の下には眼窩脂肪(がんかしぼう)というクッション材がありますが、これが加齢や靭帯の緩みによって前方へ突き出すと「目袋」と呼ばれる膨らみになります。そして、その膨らみのすぐ下には、頬の組織との境目であるティアトラフという深い凹みがセットで現れるのが一般的です。
裏ハムラ法では、この突き出た脂肪を単に切り取るのではなく、下方の凹んでいる部分へ移動させます。
手術はまぶたの裏側(結膜側)から行います。皮膚表面を切開しないため、傷跡が外側から見えないのが大きな特徴です。
具体的には、膨らみの原因となっている脂肪を包んでいる膜を広げ、凹みの原因となっている硬い靭帯(眼輪筋下脂肪との境目)を剥離します。そこに、余分な脂肪をスライドさせて、くぼみを埋めるように骨膜上へ固定します。
臨床現場で見受けるケースとして、元々のお顔立ちで頬の中央が低い方や、ゴルゴ線が目立ち始めている方にとって、この段差をフラットにする技術は非常に効果的です。ご自身の組織をそのまま利用するため、定着率の問題や異物反応の心配がほとんどない点も、この術式が人気の理由と言えるでしょう。
裏ハムラ法に対して、一般的に「クマ取り」として最も普及しているのが脱脂(経結膜脱脂術)です。これは、原因となっている眼窩脂肪をシンプルに取り除く手術です。
「切らないクマ取り」という名称で広告されることも多く、裏ハムラ法と同様にまぶたの裏側からアプローチします。手術時間は30分〜1時間程度と比較的短く、体への負担が少ないのがメリットです。
脱脂術では、内側・中央・外側の3つのコンパートメントに分かれている眼窩脂肪のうち、突出が目立つ部分を適量摘出します。パンパンに膨らんだ風船から空気を抜くように、目元のシルエットを整えていきます。
ここで重要になるのが、どのくらい除去すべきかです。多くの患者さんを診察していると、とにかく平らにしたいという一心で「たくさん取ってください」と希望される方がいらっしゃいます。しかし、医学的な知見から言えば、取りすぎは禁物です。
日本美容外科学会(JSAS)等の発表や議論でもしばしば言及されるように、眼窩脂肪は眼球を支える役割も担っています。安易に抜きすぎると、術後数年が経過して周囲の組織が萎縮した際に、目元がガクンとくぼんでしまい、かえって「老け見え」や「影クマの悪化」を招くリスクがあるからです。
そのため、脱脂術においては、単に取る技術よりも「どの位置の脂肪を、将来の老化を見据えて何グラム残すか」という、医師の診断力が仕上がりを左右します。
脱脂と裏ハムラ。この2つの決定的な違いを一言で表現するなら、「脂肪を捨てるか、移動させるか」という点で異なります。
以下の表に、両者の根本的なアプローチの違いをまとめました。
| 比較項目 | 脱脂(経結膜脱脂術) | 裏ハムラ法 |
| 脂肪の扱い | 不要な分を切除して捨てる | 凹み部分へ移動して再配置 |
| 凹みの解消 | 脱脂のみでは解消不可(脂肪注入やヒアルロン酸注入が必要な場合が多い) | 自身の脂肪移動のみで解消可能 |
| 手術の複雑さ | 比較的シンプルで短時間 | 高度な技術が必要で時間がかかる |
| リスク・懸念点 | 将来的な「くぼみ」のリスク | 技術不足による固定不全や違和感 |
裏ハムラ法が「組織保存的」と言われるのは、本来そこにあるべきご自身の組織を最大限に活用するからです。
例えば、40代以降の方で、目袋の膨らみと同時にその下の深い溝に悩まされているケースを想定してみましょう。脱脂だけを行うと、膨らみはなくなりますが、溝(凹み)はそのまま残るか、あるいはより強調されて見えることがあります。これを解決するために、脱脂とセットで「太ももなどから採取した脂肪を注入する」手法やヒアルロン酸注入がよく取られます。
一方で裏ハムラ法は、目の前にある「余った脂肪」を「足りない場所」へ動かすだけなので、わざわざ他の部位から脂肪を採取する必要がありません。「自分の体のあちこちに傷をつけたくない」「注入した脂肪がしこりになるのが怖い」という方にとって、裏ハムラ法は非常に理にかなった選択肢となります。
もちろん、脱脂には「ダウンタイムの短さ」や「費用の抑えやすさ」という大きな魅力があります。一概にどちらが優れているということではなく、ご自身の骨格、脂肪の量、そして「5年後、10年後の目元をどう描くか」という視点で選ぶことが、後悔しないための第一歩です。

「切らないクマ取り」として広く親しまれている脱脂術ですが、その手軽さの裏には、脂肪やヒアルロン酸を注入して補うセットメニューの併用が不可欠な場合もあります。
脱脂単体では、目の下の膨らみは解消できても、その下の「くぼみ」や「溝」を埋めることはできません。そのため、多くのクリニックでは、自分の太ももや腹部から採取した新鮮な脂肪を精製して注入する「脂肪注入」やヒアルロン酸の注入を併用します。
このセット術式の最大のメリットは、デザインの自由度にあります。 裏ハムラ法は「目の下にある脂肪の量」という物理的な制約を受けますが、脂肪・ヒアルロン酸注入を併用すれば、頬の高さからゴルゴ線、目尻のくぼみまで、広範囲にわたってふっくらとした若々しいボリュームを出すことが可能です。
実際にカウンセリングでお会いする患者さんの中には、「ついでに太ももの余分な脂肪も少し減らせて一石二鳥だった」と前向きに捉える方もいらっしゃいます。脂肪採取のための小さな傷は残りますが、顔全体のバランスをミリ単位で整えたい場合には、非常に柔軟性の高い手法と言えるでしょう。
一方で、この術式には「取り残し(再発)」や「注入脂肪・ヒアルロン酸のトラブル」というリスクが伴います。 脂肪を抜きすぎれば目がくぼみ、抜き足りなければ数年でまた膨らみが気になり始めます。このバランスは非常に繊細で、術者の経験値に大きく左右されます。
また、外部から注入した脂肪は、すべてが定着するわけではありません。一部が吸収されてしまったり、逆に過剰に定着して「しこり」になったりするケースも臨床現場では報告されています。 特に目の下の皮膚は非常に薄いため、しこりができると笑った時にボコッと浮き出て見えるなど、修正が困難な状態に陥ることもあるため、慎重な検討が必要です。
自分の組織をスライドさせる裏ハムラ法。その特異なメリットと、避けては通れない壁について解説します。
裏ハムラ法の最も優れた点は、異物反応や定着トラブルのリスクが極めて低いことです。 注入する脂肪は、一度体から切り離された「死んだ組織」ですが、裏ハムラで移動させる脂肪は「血流がつながったままの生きた組織」です。そのため、注入脂肪のような「減りすぎる」「しこりになる」という心配がほとんどありません。
また、多くの患者さんを拝見してきた経験上、裏ハムラ法を受けた方は、術後数年経っても目元が非常にナチュラルでフラットな状態を維持されている傾向があります。自分の目元にある脂肪だけで完結するため、不自然な膨らみが出にくく、長期的な満足度が高いのが特徴です。
しかし、裏ハムラ法は決して万能ではありません。最大のデメリットは、手術の難易度が高く、脱脂に比べダウンタイムが長くなりやすい点です。
この手術では、目の下の深い部分にある骨膜(こつまく)を剥離し、そこに脂肪を糸で固定するという複雑な工程を含みます。そのため、脱脂に比べると組織へのダメージが大きく、強い腫れや内出血が出やすい傾向にあります。 また、移動できる脂肪の量には限界があるため、もともと脂肪が非常に少ない方やくぼみが広範囲に及ぶ方の場合は、裏ハムラ法だけでは十分な改善が見込めないケースもあります。

どちらの術式が最適かは、年齢、肌の質感、そして「何を一番解決したいか」によって決まります。
脱脂術(あるいは注入との併用)が適しているのは、主に以下のようなケースです。
若年層で「涙袋が脂肪に埋もれて見えなくなっている」というタイプの方は、脱脂を行うだけで涙袋がくっきりと現れ、非常に喜ばれることが多いです。
裏ハムラ法を検討すべきなのは、以下のような悩みを持つ方です。
ここで、鏡を見て自分で判断するための簡単なチェック方法をご紹介します。「目の下の膨らみを指で軽く押さえたとき、その下の溝がより深く目立つか」を確認してみてください。もし、膨らみがなくなっても溝がくっきり残るようであれば、裏ハムラ法、あるいは脱脂に脂肪注入を組み合わせる必要性が高いと言えます。
また、50代の女性で「目の下の膨らみは気になるけれど、脂肪注入で顔がパンパンになるのは嫌だ」という方に裏ハムラ法を適用したケースでは、溝が埋まると同時に中顔面が引き締まって見え、非常に自然な若返り効果を実感していただけました。
手術を検討する際、最も大きな懸念事項となるのが「いつから仕事に行けるのか?」「どれくらい腫れるのか?」というダウンタイムの問題です。結論から言えば、裏ハムラ法は脱脂よりもダウンタイムが重くなる傾向があります。

脱脂術は、脂肪を「抜く」というシンプルな工程のため、組織へのダメージは最小限です。術後3日〜1週間程度で大きな腫れは引き、メイクで隠せる程度の内出血で済むケースが一般的です。
一方で裏ハムラ法は、脂肪を移動させるために骨の表面にある骨膜を剥離し、そこに脂肪を糸で固定します。この「剥がして固定する」という操作は、脱脂に比べると組織への負担が大きく、その分むくみや腫れが強く出やすくなります。
臨床の現場でも、患者さんの経過には明らかな差が見られます。 ある治療経験者の方は、「脱脂を受けた友人は3日後には平気そうだったけれど、裏ハムラを受けた私は1週間経っても目元の重苦しい腫れが引かず、正直とても不安だった」とおっしゃっていました。しかし、この方の場合も2週間目を過ぎたあたりから急激にむくみが取れ、1ヶ月後には脱脂だけでは得られなかった「段差のない滑らかな仕上がり」に非常に満足されていました。
裏ハムラ法を選ぶ際は、最初の1週間はしっかり休み、2週間かけて完成に近づくという、脱脂よりも一段階長い時間軸でスケジュールを立てることが大切です。

「脱脂と裏ハムラ、結局どっちがいいですか?」という問いに対し、どの医師も同じ答えを出すとは限りません。ここに、美容医療における医師選びの難しさがあります。
美容外科医の中にも「脱脂は得意だが、裏ハムラは苦手(あるいはその逆)」という偏りが存在します。 裏ハムラ法は非常に繊細な技術と時間を要するため、すべての医師が提供できるわけではありません。そのため、脱脂しか行わないクリニックでは「脂肪注入を併用すれば脱脂がベスト」と説明され、裏ハムラを売りにする院では「脱脂は将来くぼむから裏ハムラ一択」と説明される傾向があります。
これを避けるためには、両方の術式に対応しており、かつそれぞれのメリット・デメリットを公平に話してくれる医師を選ぶことです。
カウンセリングでは、ぜひ以下の質問を投げかけてみてください。「私の骨格の場合、脱脂単体だとどれくらい凹みますか?」 「裏ハムラで移動させるのに十分な脂肪の量はありますか?」 といった質問に対して、あなたの骨格や皮膚の厚みを実際に触診した上で、具体的なリスクを提示してくれる医師は信頼に値します。複数のクリニックで意見を聞き、自分の今の状態だけでなく将来の状態までを一緒に想像してくれる医師を見極めましょう。

目の下のクマ取りは、単に脂肪を減らせば良いというものではありません。 脂肪を「捨てる(脱脂)」か、それとも「移動させて活かす(裏ハムラ)」かという選択が、あなたの表情の印象を一生左右すると言っても過言ではありません。
20代で脂肪の突出がメインであれば脱脂は非常に有効な手段ですし、30代後半以降でくぼみや溝が深いのであれば、裏ハムラ法が劇的な若返りをもたらす「一生モノの手術」になる可能性があります。
大切なのは、ネット上の成功した誰かの意見を鵜呑みにするのではなく、あなた自身の解剖学的な特徴(脂肪の量、骨の形、皮膚のたるみ)に寄り添った診断を受けることです。後悔しないために、まずはあなたの目元の状態を見て最適な提案をしてくれるような、信頼できる医師に相談してみてください。

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