コラム
Column
2026/03/21
「目の下のクマやたるみを根本から解消したいけれど、顔にメスを入れるのは怖い」「切開した跡が一生残るのではないか」と不安に感じている方は少なくありません。
特に、高い若返り効果が期待できる「表ハムラ法(切開ハムラ)」は、下まぶたの表面を切開するため、傷跡への懸念から二の足を踏んでしまうケースも多く見受けられます。しかし、表ハムラ法の傷跡は適切な処置と経過をたどれば、時間の経過とともにほとんど目立たなくなるのが一般的です。
本記事では、専門医の視点から表ハムラ法の傷跡がどこにでき、どのように治っていくのか、その過程と綺麗に仕上げるためのポイントを詳しく解説します。

表ハムラ法において、最も気になるのが切開ラインの位置でしょう。この術式では、下まぶたのまつ毛の数ミリ下(約1〜2mm程度)を、まつ毛のラインに沿って切開します。
なぜあえて「表面」を切開するのか。それは、表ハムラ法が単に脂肪を移動させるだけでなく、「余分な皮膚の切除」と「眼輪筋の吊り上げ」を同時に行える唯一の術式だからです。
臨床現場でお会いする40代後半から60代以降の患者さんの多くは、目袋だけでなく、加齢による皮膚の伸びやシワを併発しています。まぶたの裏側から行う「裏ハムラ法」では皮膚のたるみまでは解消できませんが、表ハムラ法であれば、余った皮膚を数ミリ単位で精密に切り取ることが可能です。
「傷跡が残るリスク」と「たるみ取りの効果」を天秤にかけた際、多くの方が後者の劇的な変化に価値を感じてこの術式を選択されます。切開位置をまつ毛のラインに極限まで近づけ、精密に縫合することで、数ヶ月後にはノーメイクでも傷跡がまつ毛の影と同化し、ほとんど識別できないレベルまで馴染ませることが可能です。

目元の手術と聞くと「傷が残りやすいのでは?」と身構えてしまいますが、医学的には逆の側面があります。実は、まぶたの皮膚は体の中でも傷跡が最も綺麗に治りやすい部位の一つなのです。
その理由は、主に以下の2点です。
形成外科の知見に基づけば、血流が良い部位ほど炎症が早く収まり、綺麗に組織が再構築されます。実際に多くの症例を拝見していても、術後1週間で抜糸を行う頃には、すでに傷口の表面はしっかりと閉じており、その後の修復もスムーズに進む傾向があります。
「切る=一生目立つ傷が残る」というイメージがあるかもしれませんが、まぶたの解剖学的な特性を理解すれば、過度な心配は不要であることがお分かりいただけるはずです。
術後の経過を知っておくことは、ダウンタイム中の精神的な安定に直結します。一般的な回復プロセスを時系列で見ていきましょう。

手術直後から抜糸(通常5〜7日後)までの間は、傷口に非常に細い黒い糸がついた状態になります。この期間は腫れや内出血がピークを迎える時期です。
多くの患者さんが「糸がついている間が一番不安」とおっしゃいますが、抜糸が終わると急激に「手術を受けた」という実感が「綺麗になる楽しみ」へと変わっていく時期でもあります。
抜糸直後はピンク色をしていた傷跡が、この時期に一時的に赤みを増したり、手で触れると少し硬く感じられたりすることがあります。これは「拘縮(こうしゅく)」と呼ばれる、傷が治る過程で必ず起こる正常な生体反応です。
臨床的には、この時期に「傷が盛り上がってきた」「失敗したかもしれない」と不安を抱く方が少なくありません。しかし、これは内部の組織が一生懸命に修復されている証拠です。また、拘縮の影響で一時的に下まぶたがわずかに外側に引っ張られるように感じることもありますが、多くの場合、組織が柔らかくなるにつれて自然に改善していきます。
術後半年が経過すると、赤みは完全に引き、傷跡は「白い一本の細い線」へと成熟します。この段階が完成形です。
このレベルまで馴染むと、普段からコンシーラーなどで隠す必要はなく、近くで注視しなければ整形手術を受けたと気づかれることはまずありません。50代で手術を受けられたある患者さんは、半年後の検診で「すっぴんで温泉に行っても全く気にならなくなった」と喜ばれていました。このように、時間の経過が最大の解決策となるのが表ハムラ法の特徴です。
表ハムラ法は非常に綺麗に治りやすい術式ですが、稀に傷跡が予定よりも目立ってしまうケースがあります。これには体質や生活習慣、年齢などが複雑に関係しています。
ごく稀に、傷跡が赤く盛り上がったり、横に広がったりしやすい体質の方がいらっしゃいます。いわゆる「ケロイド」や肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)と呼ばれる状態です。
臨床現場での経験上、目元は体の中でも非常にケロイドになりにくい部位ではありますが、過去に帝王切開や他部位の手術、あるいは大きな怪我をした際に傷跡が盛り上がった経験がある方は注意が必要です。カウンセリング時にそのような既往歴を共有いただければ、術後早期からリザベンなどの内服薬を併用し、炎症を抑える予防策を講じることが可能です。不安がある場合は、事前に自分の傷の治り方について医師に相談しておくことが、リスクを最小限に抑える鍵となります。
表ハムラ法を検討される方の多くは40代から60代以降ですが、年齢とともに皮膚のターンオーバーは緩やかになります。20代の頃に比べて、傷口の赤みが引くまでに時間がかかったり、色素沈着が残りやすかったりする傾向があるのは事実です。
特に60代以降で皮膚の弾力が低下しているケースでは、組織の修復力も穏やかになるため、ダウンタイムのスケジュールには余裕を持つことをお勧めしています。「術後1ヶ月で完成」と思い込まず、3ヶ月から半年かけてゆっくりと馴染んでいく過程を理解しておくことで、精神的な負担も軽減されます。

意外と見落とされがちなのが、日常の生活習慣です。特に喫煙は、傷跡の天敵と言っても過言ではありません。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、傷口への血流を著しく悪化させます。
実際に、喫煙習慣がある方とそうでない方を比較すると、喫煙者の方が傷の治りが遅く、最悪の場合、皮膚の壊死や傷口が開くリスクが高まることが医学的にも指摘されています。当院でも、手術前後1ヶ月の禁煙を強く推奨していますが、これは「傷跡を一本の細い線で終わらせるための必須条件」と考えていただきたいポイントです。
手術が完璧に終わっても、その後のアフターケアが傷跡の最終的な仕上がりを左右します。
抜糸が終わった後のデリケートな傷跡には、過度な緊張をかけないことが重要です。多くのクリニックでは、抜糸後から数週間、夜間や外出時以外に「マイクロポアテープ」などの低刺激な医療用テープによる固定を推奨しています。これにより傷口が広がるのを防ぎ、より細い線へと導くことができます。
また、術後3ヶ月間の「遮光(紫外線対策)」は極めて重要です。炎症を起こしている傷跡に紫外線が当たると、茶色い「炎症後色素沈着」として残ってしまうからです。

良かれと思って行うマッサージや、目元をゴシゴシ擦る洗顔は、傷口にとって大きな負担となります。特に術後1ヶ月は、皮膚の内部で組織が接着しようとしている繊細な時期です。
強い力で擦ると、せっかく細く閉じようとしていた傷口が引っ張られて広がってしまい、結果として傷跡が太くなる原因になります。洗顔時はたっぷりの泡で包み込むように洗い、タオルで拭く際も「押さえるだけ」の動作を徹底してください。擦らないことは、シワ予防だけでなく、傷跡を消すための最大の秘訣です。
内側からのケアも忘れてはいけません。組織の再生には、細胞の材料となる「タンパク質」、コラーゲン生成を助ける「ビタミンC」、細胞分裂を促す「亜鉛」が不可欠です。
臨床の場でも、食事に気を配っている患者さんは、肌のツヤや傷の治りがスムーズな印象を受けます。また、塩分を控えた食事を心がけることで、術後のむくみを最小限に抑え、傷口にかかる内側からの圧力を減らすことも有効な対策の一つです。

表ハムラ法は非常に高度な技術を要する術式です。「傷跡が目立たないか」という不安を解消するためには、以下の基準でクリニックを選ぶことをお勧めします。
表ハムラ法は、単にクマを取るだけでなく、余分な皮膚を物理的に除去し、中顔面のたるみまでリフトアップできる素晴らしい術式です。
「傷跡が残るのでは」という不安は、切開を伴う手術であれば誰もが抱くものです。ですが、まぶたは体の中でも特に血流が良く、傷が綺麗に治りやすい部位でもあります。適切な術後ケアを続けていけば、数ヶ月後にはどこを切ったか自分でも忘れてしまうほど馴染んでいくものです。
まずは、過度に恐れすぎず、ご自身の皮膚の状態や、傷の治りやすさを専門医に正しく診断してもらうことから始めてみませんか?カウンセリングでは、あなたのライフスタイルに合わせた最適なダウンタイムの過ごし方も含め、詳しくご提案させていただきます。
Q:傷跡からまつ毛が生えてこなくなることはありますか? A:まつ毛の生え際から1〜2mm離して切開するため、まつ毛の毛根を傷つけることは通常ありません。術後一時的に抜け毛が増えることがあっても、多くの場合、休止期を経て再び生え揃います。
Q:仕事復帰はいつから可能ですか? A:デスクワークであれば、抜糸前でもメガネで隠して復帰される方は多いです。人前に出るお仕事の場合は、内出血が目立たなくなる術後10日〜2週目以降が目安となります。

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